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3D計測 No.7 「カバの親子」

2023.12.13

「エジプトはナイルのたまもの」。
これは古代ギリシアの歴史家、ヘロドトスの言葉です。エジプトでは季節ごとに起きるナイル川の氾濫によって、上流から肥沃な土壌が流域一帯にもたらされました。この農業に適した土地とナイル川という交通路のおかげで村落が発展して、古代エジプト文明の基礎ができたということを意味しています。



ピラミッドに代表される王家の墓には、副葬品として玉座・宝飾品・彫像など豪華で多種多様な品物が埋葬されました。カバの陶製小像もそのうちの一つで、中王国時代の王家の墓(紀元前約1900年)からは青色のカバの小像が出土しています。現在ではメトロポリタン博物館に展示され、ウィリアムというニックネームまで付いているそうです。その体の表面には蓮の花が描かれていて、当時のナイル川沿いに広がる湿地の風景を表現しているのかもしれません。

今回計測したものは、そんな青いカバの小像を模した置物です。だいたい同じ形ですが、黒い線で描かれた顔の表情や蓮の花の形に違いが見られます。二つ揃うとどことなく母カバと子カバにも見えるので、ここではMamとBabyという名前で区別して、その形状や大きさを比較してみたいと思います。

  • モデル表示(右側面)
    Mam

  • モデル表示(右側面)
    Baby

  • モデル表示(上面)
    Mam

  • モデル表示(上面)
    Baby

  • 断面表示
    Mam:赤色 Baby:青色

  • 比較計測図



計測の結果、BabyはMamに比べると縦に長さがあり、横幅が狭い体形をしていることが分かりました。比較計測図は、Mamを基準としてBabyの大きさの膨らみや凹みを色で表示したものです。緑色の範囲は形状が一致していることを示し、赤味が強くなると、Mamよりも大きいこと(最大+2㎜)を示し、青みが強くなると、Mamよりも小さいこと(最大-2㎜)を表しています。赤色の範囲から、BabyはMamより背が高く、顎から胸にかけても膨らんでいることが分かると思います。逆にMamについて言えば、背は低いけれど、横幅が広く、どっしりとした印象があります。そのため、エキゾチックな目の表現も合わさって、ふくよかな母親のイメージに繋がったのかもしれません。


現在、エジプトのピラミッド調査では、宇宙から地球に降り注ぐ、ミューオンと呼ばれる宇宙線を用いた研究が進められています。レントゲン写真で体の内部を撮影するように、宇宙線でピラミッド内部の写真を撮ろうとするものです。ピラミッドがどのように作り上げられていったのかということについては、まだまだ分からないことが多いようです。建物を傷つけることなく調査することができるこの新しい技術によって、ピラミッドの内部構造が詳しく分かってくれば、建造方法などの解明に繋がると期待されています。


使用機器: キーエンス製3Dスキャナ型三次元測定機VL-700
計測時間: 3時間(比較計測含む)
結  果: 丸みを帯びた凹凸を精確に表現・寸法差も計測可能
表面の釉薬に光沢があるため、ライトの反射光の写り込みあり