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3D計測 No.8 「お面」

2024.03.22

インド洋に浮かぶ宝石。
このスリランカを表現したフレーズは、その海の美しさや仏教寺院などの神秘的なイメージからきているのかもしれません。その他にも、セイロン島の形から「インドの涙」とも例えられています。




現在、スリランカでは人口の約7割を仏教徒が占めています(その他にはヒンドゥー教・イスラム教・キリスト教が各1割程度)。この国に仏教が広まったのは紀元前3世紀と古く、インドから海を渡って伝わってきました。その後、11~14世紀には上座部仏教として、さらに海を渡り、タイやカンボジアなどの東南アジアへと伝わっていきます。一方、インドから北方向に向かい、シルクロードを通って日本へ伝わった仏教は大乗仏教と呼ばれ、区別されています。
スリランカでは一時期、南インドからヒンドゥー教徒の侵入があったものの、仏教国としての歴史が長いため、国内には多くの仏教寺院が残っています。スリランカの中央部にシンハラ朝最後の都であったキャンディという町があり、この町の湖畔にはダラダー・マーリガーワという寺院が建てられています(16世紀末)。この寺院には仏陀の歯が祀られていることから仏歯寺として今もなお信仰を集めています。

また、スリランカにはこれら仏教などの宗教以外に民間信仰も広く浸透しており、個人レベルの不幸や病気などの解決法として用いられているようです。そのうちの一つに悪霊祓いの踊りがあります。これは踊りによって悪霊からもたらされた病苦を体から追い出して癒すための儀式です。この踊りの際に被るのがこのサニヤと呼ばれる木製のお面で、18種類あるという病苦を表現した姿をしています。



モデル表示

  • ソリッド表示

  • 断面表示

今回計測した緑色のお面はそれら病苦の一つを表したものです。顔が歪み、両目が大きく飛び出しているのが一番の特徴です。その他にも、牙のようなものが口から出ています。計測の結果、モデル表示の陰影によって、顔の凹凸がはっきりとし、裏面はノミのような工具で一定の方向に削った痕跡が明瞭に表れています。断面表示では部分的に厚みがかなり薄くまるまで削り込んでいることも分かります。

 

このお面がどのような症状を表しているのかは分かりませんが、一見、恐ろしい形相だと感じてしまいます。しかし、じっくりと眺めていると、どことなく愛嬌のある表情にも見えてきます。それは、この病苦をもたらす悪霊自体が、踊りによりその苦しみを取り除くという役割も担っているからなのかもしれません。



  • (追記)
    このお面は室内の壁に飾られているよりも、屋外で日の光を浴びている方が生き生きとして、本来の姿なのだろうなと感じます。
使用機器: キーエンス製3Dスキャナ型三次元測定機VL-700
計測時間: 40分
結  果:

表面の彩色や裏面の工具痕などを精確に表現
鋭いエッジが少なく比較的スキャンしやすい形状