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3D計測 No.9 「水差し」

2024.09.11

冷えた溶岩を思わせる素地にマグマのように鮮やかな釉薬。

1950年~1980年にかけて西ドイツで隆盛を極めた陶器「Fat Lava」。花器や水差しを中心として芸術性の高い陶器が盛んに製作されました。



第二次世界大戦後、ドイツはドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)として、東西冷戦を象徴するような分断国家として歩み始めます。もともとは、アメリカ・ソビエト連邦・イギリス・フランスの4カ国による分割管理の後に、一つの国家として主権を回復させる予定であったようです。それが米ソによる自由主義と社会主義との対立が大きくなったことにより、アメリカ・イギリス・フランスの管理範囲をまとめたものが西ドイツ、ソ連の範囲を東ドイツとして二つの国家に分かれてしまったのです。ソ連の管轄範囲に位置していた首都ベルリン自体も、その重要性から4カ国管理されていましたが、国土の分割と同じように米ソ両陣営の対立の影響を受け、最終的には「ベルリンの壁」が築かれるに至ります。そのため、ベルリンの西側地区だけがまるで社会主義の海に囲まれた小島のような存在になってしまいました。

このような政治的な状況のもと、西ドイツでは産業の立て直しを進める中で、窯業の発展にも注力がなされたようです。沖縄でも戦後は、庶民の生活必需品を賄うために壺屋の陶工が最初に復興作業にあたったことと通じるものがあるのかもしれません。今回取り上げたFat Lavaという陶器は、その色彩やデザインが優れており、機能的な用途以外にインテリアとしての価値も高いため芸術陶器と呼ばれています。1950年以降西ドイツを中心に製作されますが、東ドイツで作られた製品もあるようで、花器や水差しのほかにはシェードを付けたランプ台などもみられます。見た目にどっしりとした質感ものや滑らかな曲線を持つものなど様々なタイプがあり、釉薬もオレンジ・青・白など多彩で、鮮やかな色合いが特徴的です。

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今回計測した水差しは、ザラザラとした漆黒の素地に鮮やかなオレンジ色の釉薬が厚く掛け流されています。重量感ある胴部に比べると、把手はすこし薄い作りであるため、水を入れた重さを支えるには少し不安を感じてしまいます。加えて、そのあまりに個性的すぎる姿は、食卓にある他の食器との調和がとりづらいため、実用ではなく観賞用のオブジェとしてリビングルームに色を添えています。

 

使用機器:キーエンス製3Dスキャナ型三次元測定機VL-700

計測時間:1時間10分

結  果:光沢のある釉薬や凹凸のある素地の表面を精確に表現

     内部は写真が撮れないためデータなし