2023.02.06
タクラマカン砂漠の西端に位置するシルクロードの町、カシュガル(喀什)。
この町は中国で最も広い面積を持つ新疆(しんきょう)ウイグル自治区にあって、イスラム教を信仰するウイグルの人々が多く住んでいます。人々の服装、言葉、食事など様々な生活習慣にイスラム文化が色濃く感じられる場所です。
ユーラシア大陸の東西を結ぶ交通路は紀元前3000年の昔から開かれていたようです。天山山脈の麓を通る交通路に沿って多くのオアシス都市が栄え、東アジアと西アジアやヨーロッパ地域との交易が盛んにおこなわれていました。中国産の絹がこの道を通って西方に運ばれたことに由来して、シルクロードと後に呼ばれるようになりました。日本はシルクロードの東の終着地点にあたり、奈良の正倉院にはペルシャガラスや螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)など西方の文化が香る数々の品物が収められています。
シルクロード周辺は唐代には仏教が盛んで、敦煌(とんこう)など数多くの石窟(せっくつ)寺院が作られます。その後、ウイグルの人々が北方から移住してきたことで、西域でのウイグルの歴史が始まります。10世紀には西方からイスラム教が伝わり、ウイグルの文化は次第にイスラム的な色合いを強めていきます。一時的にモンゴル系の民族の支配を受けますが、18世紀に清朝の乾隆帝(けんりゅうてい)によって征服されて以降、中国の一部として現在に至っています。
1990年代末に鉄道が整備されるまで、カシュガルへ行くには砂漠地帯を走る天山南路を車やバスで長時間かけて移動するのが一般的でした。この小刀は、カシュガルが内陸の辺境地となってしまっていたその時代、土埃の多い路地にある小さな金物屋に飾られていたものです。刃部の側面にはウイグル語でこの小刀を作った人の名前が刻まれているようです。
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モデル表示(上面・側面)と断面
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ソリッド表示
刃部については刃先が狭小であるため面の形成が困難